
ミズナキドリ
バイオロギングについて勉強しました!
読んだ本
- ペンギンが教えてくれた物理のはなし(渡辺佑基)
バイオロギングとは
野生動物に記録計を取り付けてデータを得て、
どのように生きているかを観察する学問。
南極観測隊の仕事が有名だが、これには理由がある。
北極と違ってホッキョクグマのような支配種がいないため、
南極のペンギンやアザラシは油断しまくっていて捕獲が楽なのである。
その性質上生物学、地球科学、物理学、機械工学等々様々な知識が必要となる境界領域である。
境界領域について浅くでも知ると、様々な分野の情報を得ることができる。
つまり知識のインデックス作りとしてとてもコスパがいいので勉強してみた。
記録装置
深度計
バイオロギング初期から使われているもので、
生物に取り付けて圧力を計ることで生物のいた水深を知ることができる。
チューブに空気とインク(又は放射性物質)を入れることで
水圧によって水面が移動し、それを記録することで深度を読み取れる。
アザラシ回収装置
バイオロギング初期に使われていたもので、
指定時刻になるとエアバッグが開く。
これによりアザラシが水面に強制的に上がってくるので、
もがいている所を捕らえてロガーを回収する。
名前も仕組みも草。
アルゴス
アルゴスから発信する電波を衛星で受け取り、
電波の波長からドップラー効果の計算をすることで位置が分かる。
GPSと似ているが、GPSは衛星の発信電波をGPSで受信し位置を計算するもので、電波の方向が逆である。
アルゴスでは衛星側で計算するため、本体を小さくできる。
ジオロケータ
周囲の照度を記録する。
昼の長さが分かれば緯度が分かり、
南中時刻が分かれば経度が分かるため、位置を計算できる。
ポップアップタグ
水深・水温・照度を記録すると共に、既定の時刻になると
生物から切り離されて水面に浮かび、衛星へデータを送信する。

記録装置に関して言えば、近年のIoTブームとも相性が良く、
ドローンで標識情報を収集するようなものも存在する。
鳥類の水平移動
ミズナキドリはニュージーランドから偏西風に乗って東のチリ沖に向かい、
そこから貿易風に乗って日本近海に移動する。
更にそこから偏西風に乗って北東のアリューシャン列島に向かい、
最後に貿易風に乗ってニュージーランドに戻る。
偏西風と貿易風を活用して、楽に温暖な気候に居続けることに成功している。

鳥類の垂直移動
以下の3つの理由が、鳥類が高度を上げる妨げになる。
- 高いほど酸素が薄くなる
- 高いほど空気の密度が下がり、揚力が下がる
(揚力は 羽ばたき速度^2 × 翼面積 × 空気密度 に比例) - 体重が重いほど高度を上げるのにエネルギーが必要
(必要エネルギーは 体重 に比例)
(発生できるエネルギーは 体重の3/4乗 に比例)
そこで高度を上げるために動物は様々な工夫をしている。
インドガンは限界まで大きくした肺によって酸素をたくさん取り入れるうえ、
寒い(=空気の密度が上がっている)エリアで上昇することでエネルギーを節約する。
グンカンドリは限界まで大きくした翼によって低密度の空気でも揚力を得られるほか、
上昇気流に乗ることでエネルギーを節約する。
アホウドリも追い風・上向きの風にうまく乗ってエネルギーを節約している。
ハチドリは体重を極小にして上昇エネルギーを抑えつつ、
小さな翼でホバリングするために超高速で羽ばたく。

水中生物の水平移動
水中で水平移動するためには、以下の3つの関係が影響する。
- 体温が高いほど発生できるエネルギーを大きくできる
- 変温動物内であれば、発生できるエネルギーは体重の3/4乗に比例
- 水の抵抗は表面積に比例、つまり体重の2/3乗にほぼ比例
2と3より、体重が大きいほど水の抵抗を無視できる。
そこで、魚類の中でも大型で体温の高いマグロ・ホホジロザメは圧倒的に早い。
こいつらは速度を出せるため、太平洋やインド洋を端から端まで渡ることができる。
それより小型で早い水中生物の例となると、エンペラーペンギンが挙げられる。
これは体重が小さいが、魚よりも体温が高いうえ、水の抵抗のないぬるっとした形状をしている。

水中生物の垂直移動
水中で垂直移動するためには、まず浮力調整が必要になる。
したがって通常の魚類は浮き袋の維持•運転コストを抑えるため、あまり上下移動をしない。
ところがマンボウは浮き袋がなく、浮力は皮下脂肪で得ている。
このため浮き袋を膨らましたり萎めたりする必要がなく、
自由自在に上下運動できる。
更に肺呼吸生物の場合、深く潜ると潜水病(減圧症)のリスクがある。
これは深い所から浅い所へ上がった時に、血管に窒素の気泡ができて
血管を塞いだり傷つけたりするもので、人間も罹患しうる病気である。
これを防ぐため、ウェッデルアザラシは脈を落とし(徐脈)、体温を下げ(低体温)、燃費のいい速度で潜る。
更に潜る前には息を吐いて、肺ではなく血や肉に蓄えた酸素を使う。
こうすることで他の競争相手がいない深度まで潜ることができ、コオリイワシを大いに食べることができる。
人間はそのようなことはできないので、適切な時間をかけて潜航/停止/浮上しないと潜水病になってしまう。
適切な時間は『新高気圧作業安全衛生規則』や『厚生労働省告示第457号』から計算する必要がある。
スーパークリエイティブコアに関するその他の記事はこちら!