『メダロット』の定義域調査とメダロット度の算出 まっと*
*メダロット工学会(I.F.M.) メダロット哲学分科会
目的
『メダロット』は、イマジニア株式会社によるゲーム・漫画・アニメシリーズに登場するロボットである。しかしながら『メダロット』というロボットの定義・由来は作品によってバラツキがある。
例えばアニメ版では “メダロット、それはテクノロジーが生み出した、全く新しいロボットである。ティンペットと呼ばれる基本フレームに、人工知能メダルを搭載。更に様々なパーツを合体させる事によって、無限の能力を引き出す事ができるのだ!” と紹介される。
漫画版では “降り、目覚め、そして殖え” ることを目的とする侵略兵器であり、サイボーグと見做すのが適当という意見もある。
また、関連するデザイナーの手掛けた『アニマギア』やその他の所謂『ロボ娘』が『メダロット』っぽいと言われるような事象もある。
本稿では、現代人が感じる『メダロット』の定義域を調査し、どのような特徴が『メダロット』らしさを高めているのか、またその定量化に挑戦する。
調査
『メダロット』の定義域調査は、Twitterのフォロワーを中心としたアンケートによって行った。
回答・コメントを提供していただいた方にここで感謝申し上げる。
以下に調査内容と結果を示す。
ビーストマスター(ヒカル編漫画版)
・知能:模造メダル(レアメダルをコピーした人造メダル)
・身体:非ライセンス機体(ロボロボ団製機体)
パーティクル(メダロット4ゲーム版)
・知能:天然メダル
・身体:非互換機体(ヘベレケ博士製大型機体)
アラクネイトのコピー(コイシマル編漫画版、イトが目指していたもの)
・知能:改竄メダル(イトの人格をコピーした天然メダル)
・身体:非互換機体(宇宙から来訪したキッズメダロット)
デスメダロット(魂アニメ版)
・知能:改竄メダル(デスメダル)
・身体:非互換機体(デスメダロット社製機体、一部メダロット社製機体と互換性あり)
マザー復元体(グレイン)(イッキ編漫画版)
・知能:マザー脊髄
・身体:非互換機体(アキハバラ博士製大型機体の改造品)
ヘベレケ博士の影武者(無印アニメ版)
・知能:改竄メダル(ヘベレケ博士の記憶の一部をコピーしたメダル)
・身体:模擬生体(ヘベレケ博士の身体に似せた機体)
イサナガミ(イッキ編漫画版)
・知能:メダル入脳(メダルにより能力を拡張した脳)
・身体:生体(クジラ身体)
調査で『メダロット』と回答された割合、すなわち『メダロット度』を以下に示す。
なお※付は、調査はしていないが便宜上追加した項目である。
項目 | 知能 | 身体 | メダロット度 |
ヒカルのメタビー ※ | 天然メダル | ライセンス機体 | 100% ※ |
ビーストマスター | 模造メダル | 非ライセンス機体 | 86.1% |
パーティクル | 天然メダル | 非互換機体 | 83.9% |
アラクネイトのコピー | 改竄メダル | 非互換機体 | 74.4% |
デスメダロット | 改竄メダル | 非互換機体 | 74.1% |
マザー復元体(グレイン) | マザー脊髄 | 非互換機体 | 71.9% |
ヘベレケ博士の影武者 | 改竄メダル | 模擬生体 | 63.8% |
イサナガミ | メダル入脳 | 生体 | 13.4% |
ヒカル ※ | 脳 | 生体 | 0% ※ |
ラベリングとメダロット度の算出
まず、知能についてラベリングし、それぞれの定義を述べる。
天然メダルは、レアメダルとも呼称されるものである。宇宙から飛来、または古代から存在し、発掘されたことで利用されるようになったメダルである。知性・人格・自我をもち、人の手による製造・加工が施されていないものを指す。
模造メダルは、天然メダルを模してヒトが作ったメダルである。名称が付いている例としては『セレクトメダル』や『コピーメダル』が挙げられる。人の手により製造されているが、知性・人格・自我をもつ。
改竄メダルは、知性・人格・自我を消し去り上書きしてある、またはそもそも知性・人格・自我が存在しないメダルである。アラクネイトのコピー・ヘベレケ博士の影武者・デスメダロットが該当する。
マザー脊髄は、月のマザーメダロットから摘出されたものである。形状はメダルではないが、アキハバラ博士製の機体に接続できることから、メダルと入出力の互換性がある程度存在する。知性・人格・自我としては、月のマザーメダロットと連続性がある。
メダル入脳は、クジラであるイサナガミの脳に外科的にメダルが打ち込まれたものである。本人としては本来の知性・人格・自我からの連続性を感じており、脳がメダルを補助的な演算装置として使用している。
脳は、地球生物の脳を示す。
次に、身体についてラベリングし、それぞれの定義を述べる。
ライセンス機体は、メダロット社あるいはライセンス許諾された団体(RR社等)により製造された機体である。各シリーズにおいて、一般販売されている機体と考えて差し支えない。
非ライセンス機体は、ライセンス許諾されていない団体により製造されているが、ライセンス機体と互換性を持つ機体である。ロボロボ団やヘベレケ博士製のものや、アキハバラ博士製のプロトタイプが含まれる。
非互換機体は、ライセンス機体と互換性がない機体である。マザー/キッズメダロット、大型メダロット、デスメダロットが該当する。
模造生体は、地球生物に似せることを目的に作られた機体である。ヘベレケ博士の影武者が該当する。
生体は、地球生物の肉体を示す。
前項の『メダロット度』の順列を見るに、以下の順で『メダロット度』が高くなる傾向が見られる。
- 天然メダル ≧ 模造メダル > 改竄メダル ≧ マザー脊髄 > メダル入脳 > 脳
- ライセンス機体 > 非ライセンス機体 > 非互換機体 > 模造生体 > 生体
そこで (メダロット度) = (知能のメダロット度) + (身体のメダロット度) となると仮定して、それぞれのラベルのメダロット度を最小二乗法で算出した。結果を下に示す。
考察
前項の表でまず注目されるのは、天然メダルの45.7%よりも、ライセンス部品の54.3%の方が高い点である。つまり若干ではあるが、中身よりも見た目がメダロット度に寄与しやすい傾向にある。
知能に関しては、天然メダルと模造メダルの値がほぼ同じである。一方でこれらに対して改竄メダルの値は9%ほど低い。同様に、天然メダルと模造メダルに対してマザー脊髄の値は12%も下回る。したがってメダルが天然か人工かの影響はほぼないが、メダル自身の知性・人格・自我をもつかどうかの影響と、形状がメダルであるかどうかの影響は極めて大きい。このことは、メダルを埋め込まれた脳のメダロット度が極めて低いことからも補強される。
身体に関しては、ライセンス機体に対して非ライセンス機体のメダロット度は13%低く、非互換機体はそれを更に3%下回る。また、ヘベレケ博士の影武者については生体を模擬しているということ以外は非ライセンス機体と同等と考えられるが、メダロット度は非ライセンス機体より14%も下回った。このことから、ライセンスの有無とゲーム実装上メダロット扱いであったか否か(見た目のメダロットらしさ)の影響が大きく、次いでライセンス機体との互換性の有無が影響すると考えられる。
総括
最後に、調査に対していただいたコメントを含めながら総括する。
メダロット度100~90%
天然または模造メダルと、ライセンス機体で構成されたもの。
いわば『典型的なメダロット』であり、かつ『狭義のメダロット』と言える。
作中目線で考えると、ロボトル協会が何の疑いもなくレギュレーション合格とできるものとも言えよう。
メダロット度90~80%
天然または模造メダルと、非ライセンス機体または非互換部品で構成されたもの。
『(知性・人格・自我をもつ)メダルで動くロボット』と言い換えると、原作シリーズで頻出する定義に近いと言える。
本稿におけるビーストマスターやパーティクルが属する。
また情報不足のため調査項目には入れなかったが、メダロット7以降の巨大メダロットや、メダロット9のメダルイーターもこの辺りに該当すると思われる。
メダロット度80~70%
改竄メダルまたはマザー脊髄と、ライセンス機体でない機体で構成されたもの。
本稿におけるアラクネイトのコピー、デスメダロット、グレインが属する。
前2つはメダル自身の知性・人格・自我がなく、グレインは知能の形状がメダルではない点でメダロット度90~80%との差が開いている。つまり、お友達ロボット足りうる自我を持ち、メダルを内蔵しているかどうか、がメダロットらしさに大きく影響していると言える。
メダロット度70~60%
改竄メダルと、ゲーム実装上メダロット扱いでなかった機体で構成されたもの。
本稿におけるヘベレケ博士の影武者が該当する。
こちらもメダル自身に知性・人格・自我がないうえ、見た目がロボットではないためにメダロット度が低い。
ある意味でヘベレケ博士の狙い通り『メダロットとヒトの中間』に位置していると言える。
メダロット度20~10%
メダロット要素を取り入れた生体で、メダロットではほぼないとされる。
本稿ではメダルにより脳の処理能力を補助しているイサナガミが該当する。
見た目や情報処理量を無視すれば、現代人がスマートフォンを利用して活動していることと本質的には変わらず、それをロボットと呼ぶことに無理があるのと同様と考える。
こちらも情報不足のため調査項目に入れなかったが、メダロット技術が使われているのであれば、メダロット8のパシーラはここに該当すると考えられる。
まとめ
現代人が感じる『メダロット』の定義域を調査し、どのような特徴が『メダロット』らしさを高めているのか、またその定量化に挑戦した。
全体としては中身よりも見た目がメダロット度に寄与しやすく、影響の大きいものから以下のようになった。
- メダロット社あるいはライセンス許諾された団体(RR社等)により製造された機体であるか (約13%)
- ゲーム実装上メダロット扱いであったか否か(見た目のメダロットらしさ) (約13%)
- 知能の形状がメダルであるかどうか (約12%)
- メダル自身の知性・人格・自我をもつかどうか (約9%)
質問・異論があれば、コメントまたはトラックバックでいただければ幸いである。
面白いですね、お疲れ様です!
「メダロット」を人が定義したとするならお友達ロボットであるところが敷居なのかもですね
メダルの知性や自我はあまり重要ではないのは人間らしい定義に見えました
コメントありがとうございます❗励みになります
メダルの自我については、メダロットとメダロットを利用した兵器や装置のぼんやりとした境目になっているのかな〜なんて思ったりしています